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国内準優勝

TasKi

TasKiは丹精込めて作物をつくる農業のあり方を尊重し,腕への必要最低限のアシスト力を提供しす

概要

TasKiは丹精込めて作物をつくる農業のあり方を尊重し,腕への必要最低限のアシスト力を提供しす.腕を長時間あげたままにして行う果実等の収穫作業のサポートを目的としています.電池不要,利用時間制限なしの,ばねの力で腕の自重を相殺することで作業をサポートしてくれる頼りになる道具です.モータ等の電子部品を利用しないシンプルなデザインで,着るだけで効果を発揮します.1万円以下の低価格を実現する必要最小限なデザインで,導入コストを最小限に抑えました.


経緯

“農業に必要なのはアシストロボットではなく自分の仕事が続けられる道具かもしれない” 祖父は94歳まで,体力に合わせた規模で農業を営んでいました.農業は相手が植物であるため,日々の作業量に変化があります.作業の多い時期には家族,親戚や近所の人が総出で手伝っていました.私も稲の収穫を手伝った思い出があります.しかし昨今は,核家族化や地域交流の薄れ等による助合いの減少と,農業従事者の高齢化から,繁忙期の作業を少人数でこなせないために,健康で意欲があるにもかかわらず,農業をやめざる負えない場合があります.この問題の解決として,農作業負担の軽減によって,農業をもっと継続可能とする方法を検討しました.現在,作業負担軽減を狙ったアシストロボット等が研究開発されていますが,私は,道具による補助に焦点を当てました.少なくとも祖父は,作物を自らの手で丹精こめて作るクラフトマン精神を持っていました.ロボットに操られているようにただ効率的に農作業を行うこと,楽をするために高価な機械に増資して農作物価格に上乗せすることは彼らの望みではないと私は考えました.そこで,果実等の収穫時の上向き作業時の腕のサポートを一例として,必要最低限のアシストを低価格で提供するTasKiの開発をはじめました.イメージしたのは和装時に掛ける襷です.襷掛のように,日々気軽に装着してもらう道具を目指しました.農業を担うため,1kg以下×1万円 以下の軽量で扱いやすく,導入容易な低価格を実現するシンプルなデザインを試みました.


機能

TasKiは腕の自重をばねの力で相殺することで,果実収穫時等の腕を上げたままの上向き作業の負担を軽減します.農作業とは一括りには言えず,様々な作物や栽培方法によって作業は千差万別です.そこで今回はまず,腕を上げたまま行う上向き作業に着目しました.葡萄等の果実は網状の棚構造に這わせるように栽培する場合があり,作業の多くは腕をあげたまま行い,肩や腕に大きな負担となります.摘粒や袋かけ,収穫の作業等,作業の種類は様々です.基本的に,腰部等に装着した道具入れから道具や資材をとり,腕をあげて,葡萄に対して作業を行います.このような上向き作業を補助するために,腕の自重に着目しました.腕を上げたままにしていると疲れる理由は,腕に約2~4kgの自重があり,これを筋力で保持し続ける必要があるためです.すなわち,腕の自重がなければ,腕は疲れません.そこで,腕の自重によって発生する疲労の軽減を狙い,ばねの弾性力と自重を釣合わせる自重補償機構を採用しました.これは,独自の軽量かつ高精度な自重補償機構を用いて,作業時の様々な腕の姿勢において片腕あたり約2㎏の自重をばねの力で95%以上の高い精度で相殺します.さらに,人間の肩と腕の動きにスムーズに追従できる独自の水平多連結リンク機構を採用しています.そのため,TasKi装着時も,従来の作業と動作や工程を変更する必要はありません.腰の道具入れから道具を取る作業も,ちょっと息抜きにお茶をのむために腰を掛けることも可能です.このように,モータやバッテリのない完全に純機械的でシンプルな構造であるため,装置総重量1.4 kg軽量であり,かつ雨にも風にもまけないメンテナンスフリーな堅牢な構造を実現しています. 上向き作業全般に広く効果が期待できます.


開発過程

農業を支援する道具を開発するにあたり,農業アシスト装置について調査しました.1)モータ等で腕の動きをアクティブに補助するタイプ,2)腕を固定するタイプが存在しました.次にそれらの装置の特徴について分析しました.1)のタイプは,バッテリやモータ等により装置が重くなり,その装置重量が足腰への負担となる可能性があります.また農作業は長時間におよぶため,バッテリ駆動時間が不足する可能性があります.さらに,電子部品を多用しているため,価格がネックとなり広い普及にはまだ課題があります.さらに,ウェラブルな装置特融の問題として装着時の安心感についても検討しました.腕や肩の近く,首の真後ろなどに電気で動くモータ等が配置されており,モータや減速機が唸る音が耳や体の振動を通じて伝わることが,作業者の心理的な負担となる可能性が懸念されます.一方で2)の腕を固定する方式は,腕を固定するために,従来の作業と異なる動作を行う必要があります.そのため,道具や資材を取ったりしまったりする動作を阻害するため,農作業全体として負担を軽減できていない可能性が懸念されます.また,作業動作や工程の変更により,従来の作業では発生しない体の他の部位に負担が発生する懸念があります.そこで,モータやバッテリ等を用いない純機械的なデザインで,これらの問題点の改善を試みました.まず,肩や腕にかかる自重をどの程度補償すると負担が軽減するかを感覚的に把握するため,自らの腕に様々な重さのカウンタウエイトを取り付けて動作を試行しました.結果として,腕の自重の半分程度を相殺すると,動作に違和感なく,かつ腕を楽に保持できると分かりました.次に,腕の上下動時に腕の自重補償を動作可能としつつ,肩や腕の複雑な動きに追従する機構設計を行いました.これらの設計時は,野外利用を前提として,メンテナンスを必要としない堅牢な構造を心がけました.腕への取り付け方法,体への装着位置,各部品の寸法を作業動作範囲で違和感がないように,何度も調整しながら試作を繰り返しました.また,装置の特性上,装置が軽ければ軽いほど補助の性能が向上するため,不必要な部品をそぎ落とし,どんどんシンプルなデザインへとポリッシュアップし,1.4kgまで軽量化しました.最後に,機能の検証を行うため,上向き作業を想定した動作で実験的に作業負担軽減効果を確認しました.実際のブドウ棚と同じ高さの葡萄の模型を収穫する動作を行い,作業者の三角筋の筋電位を計測しました.結果,装置による補助がない場合に比べて,作業負担軽減が期待できることが分かりました.


差別化

TasKiの独自性を示すために,まず,既製品とその問題点について説明します. 既製品は大きくわけて,1)腕の動作に追従してモータ等のアクチュエータ等で補助するタイプと,2)腕を置く台を段階的に固定するタイプが存在すしました.これらの問題点について記載します. 1) 電子部品を多用するため重く,高価である.バッテリによる利用時間制限が有り.雨や砂など環境に対して配慮が必要.装置の操作やメンテナンス方法を覚える必要がある. 2) 従来作業と異なる腕の固定と非固定の切替動作が必要である.段階的固定では多くの作業姿勢を補助できない. 次に上記1)と2)の問題点を前提として,TasKiの独自性について説明します. ・関節の角度に影響せず広い可動範囲で安定した補助が可能. ・水平多連結リンク機構により,肩関節の屈曲,伸展,水平内転・外転等の作業動作を広く追従可能. ・電子部品を利用しておらずシンプルで堅牢な構造である. ・バッテリ等のエネルギ源を必要としないため連続利用可能. ・補助力のON/OFFや腕の固定のON/OFF等を操作する必要がなく,従来の作業動作を維持できる. ・装着するだけで機能するので,操作の習熟の必要がない. ・従来のモータ等々のアクチュエータを用いたアシストスーツ(ロボット)の1/4程度の重さと軽量であり,足腰に対して過剰な負担をかけない. ・従来のモータ等々のアクチュエータを用いたアシストスーツ(ロボット)の1/20程度の価格で実現可能と試算しており,導入コストを軽減できる可能性がある.


将来の計画

今後の展開として,1)装置の構造の改良による性能向上と,2)応用例の拡大による低価格化の2つを想定しています. 1)装置の構造の改良として,具体的に以下の3つを想定しています. ・現試作機での体への装着部は他の装具等を改造しました.そのため,固定方法や構造が最適ではないので,装着感の改善と軽量化のために専用設計を行います. ・迅速に試作するために汎用部品と3Dプリンタを利用して製作しました.量産に向けてよりシンプルで生産性の高い設計に変更し,さらなる軽量化と低価格化を行います.目標は1万円&1 kg以下での実現です. ・補助姿勢や補助力は数名の被験者の感覚をもとに暫定的に定めた数値でした.今後は,多くの被験者で試験を行い,各作業に対して最適な補助力を求め,さらなる作業負担軽減をめざします. 次に,2)応用例の拡大による低価格化について説明します. TasKiを農業用だけの道具にとどめることなく,広く応用利用を探索することで,安定した需要を形成します. これにより,装置の高機能かつ低価格化を実現し,農業等での個人購入での負担をさらに軽減したいと考えています.上向き作業時の負担は,農業だけにとどまらず,様々な産業分野にも存在します.例えば,組み立て作業や溶接作業等です.これらの作業に対して,このTasKiを利用して作業負担を軽減可能であるか応用利用を検討します.


他アワードでの受賞歴


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